ワタシの空白期

職場の喫煙所とデスクの往復

テーマは#ワタシの空白期

人には普段なかなか語られない、様々な「空白期」があります。

それは何者でもない、うまく言えないけれど、自分のブランクを当たり前の様に語られる機会に対して肯定的ではない社会の雰囲気がある様な気がするからです。どうしても「その様な時間は無駄だ、意味がない、価値がない」とその時は捉えられがち。でも果たしてそうでしょうか。その時の挫折や感情は僕らは無価値だとは思いませんし、むしろもっと日常的に語られるべき事ではないか、と考えます。生きることや働いていくことに対して、模索を続ける当事者の大切な「ワタシの大事な空白期」を読者へ届く気持ちを物語に変えて。

「あれ、うまく笑えない。」

僕は表情筋と口角の上げ方を忘れ、無表情でタイピングしていたキーボードの手を止めた。

 

画面から顔を上げて、職場の喫煙所に向かうため、立ち上がると立ちくらみしてもう一度椅子に座り直した。

 

上司「どないしたん?大丈夫?」

 

僕「はい、ちょっと立ちくらみしまして…少し外の空気吸ってきます。」

 

僕の空白期は「職場の喫煙所と自分のデスクまでの往復」にあると思う。

 

ヘビースモーカーではなかったが愛煙家だった。

僕は27歳の時、最後の会社員生活を送っていた。

当時勤めていた会社に対して面白みがなかった訳ではない。

 

むしろ好きな種類の仕事をやってたはずだった。

 

ただ、このまま変わらない生活が続くのかなと思うと「人生って、ホントにつまんないなぁ」と思って、煙草に火をつけた。

 

僕は5年をかけて大学を卒業し、アルバイトをふらふら。

 

そのあと友人と一緒に企画制作会社を起業。

 

その後は様々な縁を通じて25歳から会社員として「Web制作」の仕事に流れついた。

 

主な仕事はお客様(クライアント)が求める広告をつくること。

カメラマン、デザイナーさんなどの相談しながら、お客様(クライアント)が求めるものは何か、考え、方向を指し示す「Webディレクター」をしていた。

 

その仕事はもう辞めてしまったけど。

 

もちろん、決して楽しくなかった訳ではない。

 

ただ「そのとき自分の生き方」に対して全く自信がなかった。

 

このままずっと同じ場所で迎えたくなかったんだと思う。その間、2社転職を経験している。

 

仕事では住宅や不動産関係の制作物を扱う事が多く、関西の特色ある様々な地域に足を運んだ。

 

Webから冊子、映像まで何でも作った。

 

必要があれば地域の活動団体と協力してエリアの特色を表現するイベントも企画した。

 

その時に公園や自治体、市役所との折衝をしたりして。

 

家や建物は好きだったけど、その土地に住む人たちのコラムを書いたり、色んな人を紹介してもらうことの方が楽しかった。

 

その延長で、今も不動産会社の制作外注として週のうち3日だけ会社勤めしている。

 

不思議な縁があるなと思う。

 

Webの専門家になりたかった訳でも、編集者になりたかった訳でもない。

「じゃあ何になりたかったの?」って質問されるといつも困った。
僕にはなりたい職業はなかったから。

 

 
同じ頃、違うフィールドや大企業でバリバリ活躍していく友人をSNSフィードで見る度に悔しいと思っていた。

 

「大丈夫、戦うフィールドが違うんだ」と言いきかせて煙草をひと吸いした。

 

 
ずっと「僕だって…」と思いながら、かと言って大層な野心があった訳でも、それより目の前の業務すらまともに出来なかった。

 

現実は誰も知らない、見たことない雑居ビル外階段の喫煙所。

 

撮影スタジオでも、大企業のオフィスでもない。

 

ただ自分が「誰を幸せにしているのか」分からない仕事はしたくなかった。

仕事に悩んでいる人の相談を乗ったり、まちや人とひとが繋がる状況をどうやって作ろうかって事を考えたりしてSNSを漁った。

 

そんな仕事は「まず業務では扱われないんだよな」と思いながら、職場の喫煙所を後にして、いつものデスクに戻った。

 

寄稿者プロフィール

サカ アキミツ(「Blind Up.」代表)


1991年2月生まれ。兵庫県尼崎市在住。
現在は「場づくり」を通じて社会課題解決を行う不動産会社に週3所属しながら、地域や中小企業、行政と協働していくディレクション、ファシリテーション、コーディネーター、ライター、研修設計など。主に人とコトに余白を作り、可能性を活かす状況づくりが生業。2013〜2017年まで「企画・制作」を軸にWebディレクター業・スペース運営・採用・広報に従事。同年職業不適合のため7月、27歳より自分の活かし方と役割を見直すため独立。後にWebメディア「Blind Up.」を立ち上げる。

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