伴走談

「ストイック」ではない、あるのは絵に対する「想い」だけ|アーティストBambi【Vol.2-02】

働き方に悩んできた当事者たちが、自分らしい働き方ができるようになったきっかけやその経緯、そして彼らのとなりで支えてくれた「伴走者」について、当事者目線から綴っていく「伴走談」。

第2弾は、自らボールペンアーティストとして活動されながらも、アーティストのサポート活動もしているBambiさん。全4部でお届けしており、今回はその第2部です。

大学時代、たった半年で挫折を経験し、鬱になったBambiさん。しかし、自分には何もないと感じた瞬間、自分が「絵」を書いていたことに気がつきます。

本当に自分ができることに気づいたBambiさんの時間は、これから怒涛の展開をみせていきます。

前回の記事を読めていない方は、ぜひ第1部からチェックしていただけると幸いです。

「本当に何もない」と感じた時にしていることが、自分の好きなこと。|アーティストBambi【Vol.2-01】働き方に悩んできた当事者たちが、自分らしい働き方ができるようになったきっかけやその経緯、そして彼らを背後で支えてくれた「伴走者」について...

ライター:かめい(@okame1470)
カメラマン:はしー(@hashii_2)
インタビュー日:2018年11月11日

「絵」で生きると決めて、思考・行動が変わった

かめい(以下略)
かめい(以下略)
絵で生きると決めてからのスピード感がびっくりですね。
Bambi(以下略)
Bambi(以下略)
ただ、絵で仕事にするのは、画家じゃないなって思ったんですよ。画家では多分無理って当時思って。それで、自分の絵を活かせるのは平面のデザインだって思って、「グラフィックデザイン」を専攻したんです。
自分の絵が仕事になりそうな分野を考えて通い始めたんですね。それで、専門学校の様子はどんな感じだったんですか?
誰よりも勉強していました。やっぱり熱量が違ってたんで。他の子らとは年が2つ3つ違いますし、もう本気度が違ってました。
めっちゃストイックだったんですね。でも、人によってはどうしてもそこまでストイックになれないんですよ。ただBambiさんにとって、そのストイックさって自然な感じだったんじゃないでしょうか?意図的に自分を奮い起こすみたいな感覚はありました?
ストイックだと自分では思ってませんでした。純粋に勉強がしたかったんですよ。さっき勉強嫌いって言いましたけど、考えが180度変わって、全部授業出て必ずノートを取ってました。それで、放課後は図書館に行って、終バスまでデザインの本を読み漁るのを毎日してましたね。勉強は多分誰よりもしてたと思います。
勉強嫌いやったはずだったのに、原点を見つけたからこそ、苦手な勉強も熱中できる。それって、みんな自然にできるんですかね?どうなんでしょう?
うーん、どうなんだろう?
そういう強い原点があったら、自然とできるんかなって。僕そういうタイプじゃないんですよ。同じようにストイックになれたのは部活くらいでした。。
うん。
中学の顧問の先生が恩師で、そのおかげ高校からはストイックにやっていました。でも、やっぱり部活やから一定の強制力のおかげでもあるんですよ。一方で、Bambiさんの場合は完全に自分で決めて行動しています。自然とストイックになっていた話を聞くと、個人的に気になるんですよ。「そこまでガッてできる人の心理ってどんなんだろう?」って。
それに関しては、実は専門学校でアクシデントがあったんです。入った瞬間に年下の友達ができたんですよ。カッコよくてスキルがあって。でもなぜか、1年の後半くらいに、絶交されたんですよ。
えっ、どういうことですか?

絶交が「集中」へのきっかけになる

なんか、色々嫌な部分が僕にあったそうで。「もう友達やめたい。」って言われて。公園に呼び出されて言われたんですよ。
ドラマみたいだ…。
それがあってか、同じクラスの友達が一気に「スッ」て僕の周りから引いたんですよ。
そんなことがあったんですね。
そのアクシデントがあって、「お前は勉強しろ」ってことなんかなって思ったんです。遊びに来たんちゃいますし。それで「うん、勉強しよう」って、普通に勉強しましたね。でもその後、違うクラスの友達ができたんです。彼らと一緒に切磋琢磨できたおかげで、勉強を続けることができたんですよ。
原点がきっかけで、勉強に励むようになったけど、志を共有できた友達がいたからこそ、勉強に専念できたんですね。
うん、ほんとその友達のおかげです。
それで、勉強して無事2年間を過ごして…。
作家活動もちょろっとしてたんですよ。専門学校には部活みたいなのがなかったんで自分で絵の部活を作って。実は、作家になろうか会社に入ろうかでちょっと迷ってたんです。だから就活もまともにしてなかったんですよ。2社しか受けてないですね。
デザイナーを志していたからこそ、若干どうしようかなーっていう迷いがあった…。
そうです。

迷っていたからこそ、「実践」へ最大限の熱量を投入する

それで、就活は2社しか受けなくて、最初に入った会社がそのうちの1社ですか?
そうです。正確には受かっちゃったって感じですね。熱量がめっちゃでかかったんですよ。「就職したい」って思ってなかったからこそ、面接とかテストとかを本気で受けるんですよ。
やりたくないからこそ、やる分には本気でやる…。
だから、面接とかも「ガチで入りたいっす」って言ってました。おかしいですけど、迷いながらも、本気で言ってました。
原点に気づいて、学ぶ場所として専門学校も選んだのに、いざ実践というタイミングで迷いがあったんですね。でも思いは強かったからこそ、迷いながらでも「やり切りたい」って気持ちがあったんですね。
そうです、そうです。会社に行きながら作家活動しようって思ってました。それか会社入らずに作家活動するか。
結果的に、内定決まっちゃったから前者の道で行こうってなった…。
なんだかんだ興味もあったんですよ。印刷会社なんですけど、「最初はデザインで入って」って言われたんです。一応パッケージデザイナーとして入りました。
その中でグラフィックデザインという部分で仕事はできたんですか?
それが全然できなかったんすよ。やらせてもらえなかったんです。編集や製版の仕事をほぼ5年間しました。デザインはそのうちの1%くらいですね。
えっ全然できていないじゃないですか!
確かに自分がやりたいことはできなかったです。最初はすごい嫌でしたね。1、2年くらい。もうこれはただの仕事と割り切って、作家活動に振り切ってめっちゃ頑張ってました。でも、3年目くらいからめっちゃ仕事が楽しくなってきたんですよ。
何があったんですか?

「デザイン」するとは何かを、会社で学べた

「今の仕事、必要な事ちゃう?」って思ったんです。
と言うと?
もしデザイナーになったら、デザインだけじゃなくて、その過程も絶対知っとかないと、良いデザインできひんことに気づいたんです。
確かに、売るまでがゴールだとすると、デザインはほんの一部ですよね。
そう。企画からデザイン、デザインの後の編集、編集の後の製版、製版の後の印刷。一貫して学べたんですよ。「これめっちゃ大事なことや!」と思って。
それを気づけたのは、自分で作品を作る時間を持っていたからかもしれないですね。そのような気づきもあって、両立ができてたんですね。
いや、やれてなかったんですよ。
えっやれてなかったんですか?
1年目はもう覚えるのでいっぱいでした。会社2年目の時に作家活動を始めたんです。ある人がきっかけで。くまたにたかし師匠と林マリンさん、おふたりのおかげで、僕は今作家活動をやれているんです。僕が一番憧れてた作家さん、ネットの中だけでしか会ったことがない作家さん、絵だけしか見たことが無い作家さんでした。それで、師匠の個展を見に行った時に、初めて会ったんです。

始めから「作家」として見てくれた、憧れの人たちとの出会い

憧れの作家さんに会えた…。
憧れの人に会って。すごい綺麗な絵描いてはるのに、「めっちゃおっちゃんやん!」って思ってしまいましたね。(笑)
ちょっとイメージとは違った…。(笑)
ちょっとおっちゃんって言いすぎたかな。(笑)でも、その時めっちゃ優しくしてくれました。僕たまたまスクラップブック持ってて、憧れの人やったから「見てください!」って見せたんです。そしたら「うんうん、良いね!」って言ってもらったんです。
憧れの作家さんに作品を褒めてくれたのはうれしいですね。
めっちゃうれしかったです。それで、「どうしていきたいの?」と聞かれたから、「いつか師匠みたいになりたいです。」って答えたんです。そしたら、「よっしゃ。じゃあ、俺と同じ土俵に上がってこい!」って言われたんですよ。それを言ってくれた瞬間、僕のことをちゃんと「作家」として見てくれたって感じたんです。それがめっちゃうれしかったんですよね。この出会いがきっかけで「師匠」って呼ばせてもらったんです。その後も、いろんな機会で師匠が僕のことを「弟子」って呼んでいただけたんです。
それめちゃくちゃうれしいじゃないですか!今の話で思ったのは、ライターやエンジニアに「なりたいです!」って言う人、たくさんいると思うんです。それに対して、実際活躍してる人らは「なりたいじゃなくて、まず名乗れ!」ってよく言うんですよ。
うんうん。
確かに正論だけど、ちょっと突き放された感覚になってしまうんですよね。でも、Bambiさんに投げかけられた言葉は、すでに作家として見てくれてて、その上で同じ土俵で切磋琢磨しようぜって言ってくれている。これって始める人からすると、これ以上ないうれしい言葉だと思うんですよ。
多分若者を引っ張り上げてくれる存在やったんだと思うんです。師匠は。
かっこいいですね。
めっちゃかっこいいなって思ったし、「もうめっちゃ頑張ろう!」ってなった。それで後日、また師匠の個展に行った時に、林マリンさんに出会ったんです。当時、マリンさんは展示を開催しようとしていて、「私の所で展示してみない?」って誘ってくれたんです。それが自分の作品の初展示でした。
えっすごいテンポ良く行ってる!
そうですね。でも、気づいたらそんな感じでした。自分から展示したいとかも全然思ってなかったし。すごい遠い存在やと思ってたのに。
偶然に感じますけど、僕からすると原点があって、自然に熱量が届いた印象です。
どうなんでしょうね。ちょっとわからないですけど。(笑)
そうですよね。(笑)でもそのおかげで、自分の作品がちゃんと展示されたっていうのが、ちゃんと作家としてやろうっていう決意に至った…。
そうそう。それが2013年。

絵を「売る」よりも、仲間と「話す」方が楽しかった

確かに世の中に出したら、良い意味で責任感が生まれますよね。それから、ちゃんと印刷会社の仕事をやりつつも、作家として活動を開始された。
実は、当時作家としてやる、つまり売ることとか、見せることとか、作品のクオリティを上げることっていうのは、あんまり意識してなかったです。
どういうことですか?
作家さんと繋がれることが楽しかったんですよ。
その時点でもう、作家さんのサポーターとしての布石を感じます。
多分そうやと思います。当時の展示って個展じゃなかったんですよ。基本グループ展なんです。
お金がないから…。
そう。だいたい5人とか10人とかで3000円くらい出して、グループで行うから、毎回人が変わるんですよ。同じ境遇の作家が基本的に集まるから、自然に会話が弾んで、それが楽しすぎるんです。
状況が基本一緒だから。
ちょっと先でやってたりする人もいるんですけど。作家としてやってる自分と、作家としてやってる相手と話してるのが、もうめっちゃ楽しくて、幸せでした。
作品を展示では、話しに行くのが目的になっていた…。
そうです。とにかく楽しかったです。話すのが楽しかったです。だから、毎週展示してました。もう、「売る」よりも「話しに行く」ことが目的になっていました。(笑)
なるほど。
もう、みんなと飲みに行くみたいな感じ。週末に友達たちと飲みに行くように、楽しむために展示に出してたんですよ。
僕がイメージする作家さんとは違う印象です。
過去に挫折や絶好があったから、人と話すのが結構苦手になっていたんですけど、展示の時に他の作家さんと話すことで、また自然に人と話せるようになれたんです。
ちなみに、どういう話をしていたんですか?
普通に「どんな絵を描いてはるんですか?」「こんなん描いてます。」って感じ。僕、人が作るものに対して「めちゃ凄い」って思うタイプなんです。ほんまに凄いって思うから、「めっちゃ綺麗ですね、めっちゃかっこいいですね、めっちゃすごいですね!」って普通に言ってました。だって、言われるのめっちゃ嬉しいじゃないですか。僕も言われるのめっちゃ嬉しいんで。
それで、どんどんいろんな作家さんと話していったんですね
うん。「何が好きなんですか?これからどんなことしようと思ってるんですか?どこ展示しようと思ってるんですか?」って自然に話題が出てくるんです。
今ぽろっと出た、相手の作品がカッコいい・尊敬できるっていうのは、なんでそう思えたんですか?作家さんって「いや、俺の方がすげぇし!」って勝手なイメージがあるんで…。

作品を比べるのではなく、籠めた「想い」を尊重する

それはちょっと…なんでだろう?わかんないですけど、その人にしかできないものが、そこに映し出されてるわけじゃないですか。
そうですね。
「それってめっちゃ凄い!」って思うんですよ。自然に。
自然とそういう気持ちがあるんですね。
比べるものじゃないし。自分よりすごい人はいるし、でもその人の絵と自分の絵を比べるのは違うから。僕の方がすごいとかは全然思わなかったですね。
ちょっと憶測になるんですけど、今までずっと自分の絵しか見れなかったからこそ、自然に相手目線で見れるようになったのかなって思いました。
作品には作ったその人の生き方が反映されているんですよね。だから比べるっていう概念がなくなったんだと思います。
今の聞いて、まさにBambiさんの絵は、自分の今までの人生が反映されてるものだと思うんです。だからこそ、相手にも同じものがあると、感じているんかなと…。
あー、それはあると思います。自然となっていると思います。自分がそうやって描くことになったから、絶対にその人も何かあってそうなってるって思うから、その部分を聞いてたりもしましたね。「なんで絵を描いてるの?」とか。聞いてましたね、確かに。
現在のアーティストのサポートの活動のきっかけの一つとして、この時間は大きかったと感じました。僕個人の感覚なんですけど、作品の背景を知るのが鑑賞の真髄って考えているんです。
うんうん。
楽しみ方はそれぞれですけど。でも「表現」って、何か伝えたいとか、何かを込めたいっていうのはあると思うんです。最近、それを感じ取る姿勢の人が少ないなって。偉そうですけど思ってて。だからこそ、そんな姿勢が自然と身についているBambiさんにたくさんアーティストが集まるのかなって。そこに関してはどうですか?ご自身で。
どうなんだろう。ちょっと分からない。(笑)今は相手のどういう人生を歩んできたとか、なんで絵を描いてるかとか、聞くことはしてなくて。そういう機会があったら話すとは思うんですけど、今は作家さんが悩んでることとか、頑張ろうとしてることを、話聞いたりアドバイスがしたいので。でも、言ってくれたことは考えた方がいいのかもしれない。
なるほど。これはあくまで僕の憶測なので…。それで、いろんな作家さんとコミュニケーションを重ねることで、その後はどうなったんですか?
こんな感じで、いろんなアーティストとの出会いがあった中で、滝本章雄さんっていう人に会うんです。ArtLabOMMというギャラリーのオーナーさんです。そこで展示したことで、「売るため」とか「見せるため」とか、自分の表現について学ぶことができたんです。

「絵」で生きると決めたBambiさんは、「絵」に対する熱量がとても大きいことが感じられました。一見ストイックに見えるようで、自身はそのような感覚がない。

それは、自分が「絵」で生きると心から決めたから。「絵」で生きるからこそ、そのために必要なことに「やらない」という選択肢はない。

そこには、ただただ自分を支えてくれた「絵」に対する想いがあるだけ。だからこそ、そんな想いに応えたい伴走者が彼のもとに現れる。

次回、Bambiさんはついに「作家」として生きていけるようになります。もちろん、その時にも、彼のそばには「伴走者」の存在がいました。

Blind Up.は関わりたい方をお待ちしています

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

今回の記事も含めて、Blind Up.では働き方で悩んでいきた「当事者」によって運営されています。

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